映画「帰ってきたヒトラー」。歴史に疎くても楽しめる一作だった。
映画「帰ってきたヒトラー」。プライムに上がっていました。結構面白かったので、レビューをしておこうと思います。
◆あらすじ
ギャップに笑い、まっすぐな情熱に惹かれ、正気と狂気の一線を見失う―。
歴史上〈絶対悪〉であるヒトラーが現代に甦り、モノマネ芸人と誤解されて引っ張り出されたテレビの世界で大スターになるという大胆不敵な小説が2012年にドイツで発売。絶賛と非難の爆風をくぐり抜け、国内で200万部を売り上げた。その世界41カ国で翻訳、権威あるタイムズのベストセラーリストでも堂々NO.1に輝いた問題小説が、まさかの映画化!ドイツではディズニーの大ヒットアニメ『インサイド・ヘッド』を抑えて第1位を獲得した。
主役を演じるのは、リアリティを追求するために選ばれた無名の実力派舞台俳優。ヒトラーに扮した彼が街に飛び込み、実在の政治家や有名人、果てはネオナチと顔を合わせるというアドリブシーンを盛り込んだセンセーショナルな展開と、原作とは違う予測不能な結末は、一大ブームを巻き起こした。
◆見どころ
ほんとに蘇ったらこうなりそうって思える。
ヒトラーが生きたのは1889年-1945年と今から70年も前。当然パソコンなんか無いし、国民だって本物のヒトラーを知らない。現代に現れたヒトラーは最初は戸惑いながらも、新聞やテレビを読み漁って現代の知識をぐんぐんつけて、適応していく。その姿がなんともコミカル。例えば当時はタイプライターが主流でした。だから初めてパソコンの説明を聞いた時に「このイントラネットというものは人類の画期的な発明だ!」と涙を流していました。怖い印象が強いだけに、こんなことに泣くなんて!とちょっとクスッとなる感じです。
そして、現代の知識をつけたヒトラーは、国民の政治的な悩みに気づき、そこをコミカルに、そしてシリアスに演説。(テレビ生放送に出演する機会があり、その際に台本を無視してアドリブで演説。)
私の前に人が立っている。
手に板を持っており、私に読めと言うのだ
小話が書かれている
外国人の揶揄だ
外国人をわらって何になる
ネズミの駆除は道化でなく駆除係が行う
ホテルのテレビはこの薄さだ
人類による奇跡の発明である
ではその中身は?
低俗なものばかりだ。
苦しい時代は娯楽がいる
1944年もそうだ
今それほど悪いのか。ここまで低俗な番組を垂れ流すとは!
この国は何だ?
子供の貧困 老人の貧困 失業 過去最低の出生率
無理もない 誰がこの国で子供を産む?
我々は奈落へまっしぐら
だがその奈落を我々は知らない
テレビは奈落を写さず
料理番組しか流さない
私はテレビと戦う
我々が奈落を知り克服するようになるまで
20時45分より反撃放送を行う
いや、すごい。もちろん映画の中の話であるのだが、最初はヒトラーと聞いて難色を示していた人たちもどんどんヒトラーに引き込まれていっている様子が描かれています。そして最後に気づく。ユダヤ人のおばあさんがこいつは本物だ、と言う言葉で本当に本物のヒトラーが生き返ってきた、と。
エンディングでは、ヒトラーに対してにこやかに手を降る人が映る。そして「そろそろだな」ヒトラーが呟くところで終わる。
一体何がそろそろなのか?テレビの世界から政治に乗り出すのか?戦争を始めるのか?ユダヤ人を絶滅させるのか?ぞくっとする終わり方でした。
ほんとに蘇ったらこんな風になるのかもしれない。そう思える感じでした。
細部のこだわりもいい。
細かな設定にもちゃんとこだわっているところもたまりません。
・ヒトラーがタイムスリップしてきた場所→最後にヒトラーが自害したとされるベルリンの地下壕跡地。
・資金が尽きると、街で絵を書いて、寄付を募った→実際にヒトラーは政治家であり、画家でもあった
・犬を借りようとするとき「ジャーマンシェパード」を希望→ヒトラーはジャーマンシェパードを飼っていた。非常に大切にしていた。
などなど。詳しい人ならもっと出てくるのかもしれませんが。二度三度と楽しめるように思います。
◆まとめ:ただ面白いだけではない映画
民衆の心の中にある「隠れた不満」を暴き出して、民衆を徐々に味方につけていました。これって、本当に悪いのは何なのかをじっくり考えていないと、誰かの言葉に簡単に洗脳されてしまうってことではないでしょうか。何が正しいのか、自分で考えて選択していくことが大切だと、気づかせてくれる映画だったように思います。
アマゾンプライムで無料で見れるので、興味がある方はぜひぜひ。