映画「暗黒女子」がどす黒く残酷だった件(ネタバレと感想)
イヤミスって知っていますか?
殺人鬼フジコのような読んだ後にイヤな気分になるミステリーのこと。この暗黒女子はイヤミスそのもののようなお話。最初はこんなにじっくり見るつもりはなかったのですが、一気に引き込まれました。
※ネタバレ入るので楽しみにしている方は、見てから来てくださいね。また黒々とした女子の世界をちょいと覗きたい人はラストを推理しながら見てださい。そしてすでに見た人は内容を振り返りながら見てください。
でわ、どうぞ♪
- ▼始まりはある女生徒の死から
- ▼一人目「太陽のような人」二谷美礼
- ▼二人目「マカロナージュ」小南あかね
- ▼三人目「女神の祈り」ディアナ・デチェヴァ
- ▼四人目「赤い花」高岡志夜
- ▼五人目「死者のつぶやき」白石いつみ
- ▼六人目「閉会の挨拶」澄川小百合
- ▼感想
▼始まりはある女生徒の死から
文学サークル会長白石いつみが「すずらんの花」を握りしめて、屋上から落ちたシーンから始まります。
舞台は、聖母女子高等学院。いわゆるお嬢様学校。
彼女が所属する文学サークルでは、毎年恒例の闇鍋をしながらの自作小説の朗読会がある。いつもは小説のテーマは自由ですが、今回は現会長の澄川小百合により「前会長・白石いつみの死」がテーマに設定されました。白石いつみを誰が、何の目的で死に追いやったのか?各メンバー内の小説の内容が語られるとともに、真実が明らかになっていきます。
▼一人目「太陽のような人」二谷美礼
小説の内容
家が貧しいけれど、聖母女子高等学院に入りたくて猛勉強。学年で1人しかいない特待生となって入学。でも友達ができずひとりぼっち。そこに声をかけてくれたのが、前会長の白石いつみだった。白石いつみは太陽なような存在だったと語る。
▼二人目「マカロナージュ」小南あかね
小説の内容
料亭の娘に生まれたけれど、跡取りは兄弟に決まっていた。家での居場所がなかった。だからこそ、和食ではなく、洋菓子作りに目覚めていく。その時起こった料亭の火事。前会長の白石いつみに文学サークルに誘われる。最初は乗り気ではなかったが、サークルの設備にはキッチンもあって、思う存分洋菓子が作れた。そこはいつしか自分の居場所になった。白石いつみを感謝し、尊敬していた。そんな時に白石いつみから、後輩の二谷美礼(最初に小説を読んだ少女)が盗みをしていることを告白される。大切にしていた「すずらん」のバレッタが盗まれたことも・・・。
▼三人目「女神の祈り」ディアナ・デチェヴァ
小説の内容
ディアナはブルガリア人の留学生。留学のきっかけは白石いつみ。白石いつみがブルガリアに来た時にディアナの双子の姉と知り合いになり、日本留学が決まったが、直前で姉が怪我をしてしまい代わりにディアナが留学する。白石いつみと同じ文学サークルに入れてとても嬉しいがある時に、小南あかね(小説を二人目に読んだ少女)に徐々に疑いの目を向け始める。お菓子に毒が入っているのではないか?小南あかねの腕には「すずらんの形の火傷の跡」があることに気づく。
▼四人目「赤い花」高岡志夜
小説の内容
女子高生なのに本を出したことがきっかけで白石いつみに文学サークルに誘われる。文学サークルは高嶺の花のような存在だったので、誘われて嬉しかった。さらに白石いつみが文学サークルの部屋を執筆用に貸してくれたり、貴重な書籍を見られたり、白石いつみの父(学園理事長)と出版社とのパイプができたり、白石いつみに感謝していた。だが、ある時に気づくのだ。ディアナ(小説を三人目に読んだ少女)が書物に出てくる吸血鬼に似ていることに。日々弱っていく白石いつみと徐々に親しくなるディアナを見て疑惑の目を向ける。ディアナは母国の花として「すずらん」を花壇に植えていた。
▼五人目「死者のつぶやき」白石いつみ
最後の小説は、死んだ白石いつみから預かっていた小説を現会長の澄川小百合が読んだ。
小説の内容
私が物語の主人公である。
顧問の先生と付き合い、留学先のブルガリアで甘い時間を過ごしていた。帰国し先生との時間を増やすため、文学サークルを作り、その部室を密会の場所にしていたこと。だがある時物足りなさを覚える。女子高生という短い時間をより充実させるには自分を引き立たせる脇役の存在が必要であるということに気づく。そこで自分の思った通りに動く脇役が欲しい。弱みを握った女子を文学サークルに引き入れた。
二谷美礼は援助交際の現場を。小南あかねは自宅を放火したところを。ディアナは姉を事故に合わせて代わりに留学生になったことを。高岡志夜は小説が盗用であったことを。
ここは私が築いた楽園だった。だが、ある時先生との子供を授かったことが分かる。名前を「すずらん」と決める。そしてそれが父(理事長)にバレて、先生は解雇。そして子供は堕ろさせられてしまう。一体なぜバレたのか?そう、脇役たちがはむかったのだ。一人一人が結束し、妊娠の事実に気づき通っている病院や相手を突き止めて、理事長に告げ口をしたのだ。
復讐のためにできること。すずらんの花を持ち、屋上から飛び降りること。そうすることで、飛び降りの原因を告発したことや自分たちの弱みを知られたくない4人はお互いの嘘の噂を流し、自分たちの中に犯人がいるようにみせ、全員を疑わしくすることで真実にたどり着けないようにした。
そしてそうなることも全てわかった上で仕組んだこと。狂言自殺だった。これで私が物語の主人公に再びなれる。
▼六人目「閉会の挨拶」澄川小百合
澄川小百合が語る。
白石いつみはずっと憧れだった。だからずっと側で支えて、見守ってきた。白石いつみが屋上から落ちたあと、実は生きていたことももちろん知っていた。だけど、私が好きだった白石いつみはいなくなってしまった。
白石いつみは、狂言自殺のあと密かに先生と暮らし、貧しくても人並みの暮らしに満足していた。残酷で華やかだった白石いつみはもういない。
そこで気づいた。自分が物語の主人公に代わりになれることに。
小説の朗読会が行われる日の昼、文学サークルにこっそり遊びにきた白石いつみ。すずらんは、花や球根に毒がある。飲んでいる紅茶にすずらんのエキスを入れた。倒れる白石いつみ。殺したのは澄川小百合だった。
朗読会では、闇鍋が振舞われる。澄川小百合が明かりをつけて鍋をかき回す。真っ赤な汁。中から出てきたのは、白石いつみが身につけていた指輪だった。そう具材は・・・
エンディングは、白石いつみの代わりに、4人の後輩に慕われて学園の人気者として暮らす澄川小百合が出てきて終わる。
▼感想
イヤミスが過ぎる。怖過ぎる。
最初は小説を読んでいる4人の話を見ていくと犯人が分かるんかな、と思っていたんですよね。誰が嘘を言っているのか?真実はなんなのか?を突き止めるのが醍醐味。
なので、最初の時点では自殺説を結構考えていました。小説の朗読でそれぞれの視点が語られると、白石いつみが精神的に弱っていたのは分かったので、全て真実で、耐えかねて自殺したのではないか?と思いました。
ですが、実は白石いつみが諸悪の根源で、全員の弱みを握って牛耳っていたなんて。その後に、闇鍋の具材になっていたことを思うと一番怖いのは澄川小百合でしたね。
高校生って現実と妄想の区別がつきづらい気がするんです。だからこそ、澄川小百合は白石いつみに理想を見れなくなった時に、自分が成り代わることを思いつき実行できてしまったんじゃないでしょうか。罪の意識?全くないと思います。現実と妄想の区別が付いていないので、どこまでも自分の妄想の物語としか思ってないんじゃないでしょうか。
これぞ、イヤミスの傑作ですね。小説版も気になります!