「DEAN&DELUCA 食卓の経営塾」はアートな書籍でした。
DEAN&DELUCAの代表横川正紀さんが書かれた「食卓の経営塾」を読みました。
経営塾というタイトルからがっつりマーケティングっぽい感じの内容を想定していましたが、もっと温かみのある、人と仕事するってこういうことだな、という心温まる内容でした。
「本質力」が未来に残る仕事をつくる―ディーン&デルーカの日本躍進を導いたユニークな経営哲学の全て。これからのビジネスに不可欠な「本質力」のヒントが満載。
書籍で印象にところったところ
フィロソフィー(哲学)が根っこになければ、成功は見えてこない
ディーン&デルーカの横川正紀さんは、最初はセンスのある個人店をライバルとしていたインテリアショップを経営していたそうです。
その後偶然「ディーン&デルーカを日本でやらないか?」とオファーが。もとがインテリアショップ経営だったため未経験の食品ビジネスに挑戦することに。
ディーン&デルーカのニューヨーク店には、マニュアルがなくお店の作り方などの引き継ぎもなかったため、自分たちで店を訪れ聞き取り、メジャーでサイズを測り、お店の魅せ方を考えて、日本一号店をオープンしたそうです。
ニューヨークと同じようにまるごとの魚をクラッシュドアイスの上に並べ、野菜や果物はカゴいっぱいに盛り付け、羽毛の残った鴨やブロックのまま吊るした牛肉、豚の頭まで鮮度と見せ方にこだわって売場づくりを行いました。結果は惨敗。経営はまさに火の車となったそうです。
理由は日本とアメリカでは食分が異なり、海外のように食材を塊のまま陳列してあっても「これはいったい何に使うんだ?」と感じてしまうから。(日本はお魚もほぼ切り身で売っていますしね)誰も買わない食材が毎日ロスになっていきました。インテリアショップの利益がディーン&デルーカに消えていきます。
そこで、まだ出来て半年の店舗を改装し「食材をまずはそのまま食べてもらう」というイートインスペースを併設した現在のスタイルのお店を作りました。最悪の状態からはなんとか脱出。
その後、創業者のデルーカさんに会いに行きました。
そうすると、今のお店の考え方は、アメリカの店舗の見かけを真似しているだけで、ディーン&デルーカの本質を捉えていないことに気付かされます。
そこから本質を捉えた日本ならではの売場づくりに変わっていきます。徐々に売上が伸びていきました。
デルーカさん:
世界にはまだ知らない美味しいものがたくさんある。売れるものじゃなく、売りたいもの、自分たちが食べたくて、食べる価値のあるものだけを扱う店をつくろう。おいしいものを味わう感動は必ず人を幸せにするものだから
→お店づくりの変更:
新鮮な食材をアメリカ風に飾るのではなく、世界各地の食文化を日本の都市生活に取り入れやすいようにローカル目線で編集し、想いとともに届けていく。
この本質を捉えることを大切にしていて、人に対してもこの根っこの考え方を合わせるようにして、お店を作っていきました。
「売れるから売る」というのではなく、自分たちが本当にいいと思ったものを、日本の食文化に沿うように届けていく、そういう考え方がカッコよくて、ディーン&デルーカってこういうお店だよな〜!!と感じました。
自身は無印良品が好きです。特別におしゃれなものがあるわけじゃないのですが、オーガニックコットンのシャツや、シンプルなノート、化粧水を買っています。シンプルで愛着がわくもの。持っているだけで無印良品のお店の中みたいな丁寧な暮らしができるような気がしてきます。
心に響くビジネスを育てるためには、まずはその本質を捉えて掘り下げること、そうすると自然と考えに共感し、少しでもその想いを味わいたい人が集まってくるのではないでしょうか。こうした視点の書籍はあまりないのでとても面白かったです。